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弟じゃないふた振り​-解説-

 こちらは、以前書いた「弟じゃないふた振り」の補足というか、シナリオ解説みたいな物です。

「あの文章からこれを読み取れとか無理じゃん」と思ったので、書きました。

「そんな無粋な事をするな」と思わずに読める方だけ読んでやってください。

 大包膝が増える事を祈っています!!!

◆生まれ変わる

 

 まず、解説するにあたって、大包平と膝丸が閉じ込められた空間は何だったのか、というお話をさせていただきます。

 二人が閉じ込められたのは鍛刀部屋です。鍛刀部屋というのは、刀が鍛刀され、生み出される部屋です。

 では何故そこに閉じ込められたのかというと、二人が「生まれ変わる」ためでした。

 膝丸の言う「穏やかな気持ち」とは、新しい自分に生まれ変わる気持ちです。膝丸が穏やかだと言っている時はそういう意味で言っていますが、本人はそれを自覚していません。

 

 では何に生まれ変わるのかというと、「『誰かの弟』ではない一人の存在」です。

 しかし、生まれ変わる必要性を感じているのは膝丸だけで、大包平はそれに巻き込まれただけでした。

 

 じゃあ、何故膝丸が生まれ変わろうと思ったのか。

 それは、膝丸にとっての一番の存在が髭切だったからです。

 しかし、膝丸の中でそれが揺らごうとしています。

 膝丸自身は「兄者以外を愛するなんて出来ない」という葛藤がありました。それでも大包平を愛したいと思った膝丸がとった手段が「兄者以外を愛せるように、兄者の弟でない存在として生まれ変わること」だったのです。

 

 そのために膝丸は鍛刀部屋へ閉じこもり、大包平もそれに巻き込まれました。

◆酒と夜

 

 夜に膝丸の部屋に行くシーンは全部で4つあります。

 

① 現実世界、鶯丸が寝ていて、髭切が部屋を外している夜。

② 鍛刀部屋、鶯丸が寝ていて、髭切が部屋を外している夜。

③ 鍛刀部屋、大包平が酒を持っておらず、髭切が部屋を外している夜。

④ 鍛刀部屋、大包平が酒を持っておらず、髭切が部屋にいる夜

 

以上の4つです。

それぞれの夜について、お話をしていきます。

 

 まず、①の夜。

 この日は、大包平と膝丸にとって、とても都合のいいシチュエーションです。大包平はどうとでも理由をつけて膝丸に会いに行けて、膝丸も「兄者の留守を預かっている」という理由で大包平を部屋に招き入れることができます。二人は特に頑張ることなく会うことができたのです。

 しかし、二人の本音は「会いたい」という、それだけなのです。それを大包平は自覚しておらず、膝丸は自覚しないようにしています。

 お互いの気持ちに気付くのは、酒を零した後です。そこでお互い、好きあっているのだと気づきます。しかしそれでも踏み込めないのは、膝丸の「兄者以外を愛する」事に対する葛藤と恐怖があったからでした。


 

 次に②の夜。

 鍛刀部屋での初めての夜です。この日も、二人にとって都合のいいシチュエーションでした。膝丸は現実世界での夜を繰り返すことで、大包平に「何故、俺の部屋に来たのか」を問い、大包平に告白させようとしていました。そこで告白されたら、膝丸は大包平を連れて生まれ変わるつもりだったので、穏やかな表情をしています。

 しかし大包平は何故膝丸の部屋に来たのかをまだ自覚していなかったため、ここでは何も答えられず、夜を越します。


 

 そして③の夜。

 大包平はこの日はただ「酒に飽きたから」という理由で酒を持たずに膝丸の部屋に行きます。しかし、まだ「何故膝丸の部屋に来たのか」が分かっていません。なので大包平は「散歩に行く」という理由をとってつけました。

 そして膝丸も、「何故大包平を部屋に招き入れたのか」を自覚していませんでした。


 

 最後に④の夜です。

 この日は大包平は酒を持っておらず、鶯丸も寝ていません。なので、「膝丸に会う」以外の理由がありませんでした。

 対する膝丸の部屋にも髭切がいます。なので大包平を部屋に招く時に「兄者の留守を預かってる」という理由が使えないので、こちらもまた「大包平と会う」以外に理由がありません。

 そして膝丸も大包平も、会うだけならそのまま部屋に入ればよかったのです。しかし大包平は部屋に入ろうとせず、膝丸も散歩を提案します。これは二人が「二人きりになりたい」と思ったからそうした事です。

 これにより大包平と膝丸は「あの日、自分はこの人に会いたくて会いに行ったんだ」と自覚します。


 

 ちなみに、鍛刀部屋での時間はループしておらず、ただ似たような毎日を送っているだけです。

◆鍛刀部屋の兄弟

 鍛刀部屋では、鶯丸と髭切は、大包平と膝丸を兄弟だと認識していません。何故なら、大包平と膝丸が弟でない存在として生まれ変わろうとしていたからです。なので鶯丸は大包平に「同室のよしみ」と言っていました。

 

 しかし、④の朝の会話で鶯丸は大包平を兄弟だと認識します。それは、大包平が鶯丸から酒を受け取らず、生まれ変わることをやめたからです。

 その時鶯丸は大包平に「時には弟で、時には膝丸の恋人となる。愛には色んな形があり、多面性があって当然だ」みたいな意味で「弟であり弟でない」と言います。

 

 鍛刀部屋での鶯丸と髭切は、大包平と膝丸の心象でした。なので二人の気持ちが変わると、兄たちの行動も変わったのです。

◆現実世界
 

 現実世界での鶯丸と髭切はとてものんきに話しているように見えますが、結構焦っています。だから弟たちのことばかり話し、自分たちの気持ちを落ち着けるためにふざけたような事を言っています。

 

 そして弟たちが戻ってきます。弟たちはちゃんと弟として戻ってきて、結局生まれ変わる事はありませんでした。

 鶯丸と髭切は弟を弟として愛します。大包平と膝丸は兄を兄として愛し、またお互いをどう愛するかを模索しながら交際します。きっと近いうちに大包平と膝丸はお互いの愛し方を見つけて幸せになってくれることでしょう。

◆あとがき

 以上のことを、あの文章から読み取るのマジ無理だなと思い解説を書かせていただきました。

 解説していない部分もありますので、もしよければ解説を踏まえた上で読んでいただければ「こういうことなのかな?」と思う部分が見つかってくるかな? と思います。

 長々と失礼いたしました。そしてここまで読んでくださって本当にありがとうございます。

 

 大包膝、増えてくれるといいな!!!!!

お酒弱すぎて飲めないから燗酒のくだりは調べながら書いたんですけど、実際、沸騰するほど熱したお酒って不味いのかな?アルコール飛んじゃう?

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